| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-264 (Poster presentation)
スギ・ヒノキなどの針葉樹人工林は、戦後大量に造林され、高齢級の林分が増加している。木材需要にこたえる形で皆伐が進む地域がある一方で、管理不足により公益的機能の低下が懸念される林分が全国各地に存在する。また皆伐後、再造林がされない林分が増えつつある。今後日本の森林資源を、気候変動の影響も踏まえつつ適切に管理するには、森林施業が人工林に与える効果と気候変動の影響とを同時かつ長期に予測する技術が必要になる。本研究グループでは、動的全球植生モデルSEIB-DGVMについて、国内のスギ・ヒノキ人工林を適切に扱えるように拡張し、それらの構造と機能について、様々な気候変動と施業(植栽・間伐)のシナリオ下における変化を予測するシミュレーターの開発を進めている。
本研究では、茨城県高萩市・上君田試験地(スギ人工林)の毎木調査結果を検証用データとして、①樹木成長の時間変化、②間伐に対する樹木成長応答(間伐4・24年後の期首胸高直径と定期胸高直径成長量の関係性)、について拡張版モデルの再現性を検証した。①について、試験地内では間伐の有無に関わらず、拡張版モデルは樹高・胸高直径を過小評価(樹高で20.0-28.1%、胸高直径で7.9-21.9%)するものの、その時間変化の推定は妥当であった。②については、強度間伐区において成長が良くなり、特に間伐4年後における定期胸高直径成長が促進される観測結果を拡張版モデルは再現できていた。これらの結果から、拡張版SEIB-DGVMは国内のスギ人工林動態の長期予測に有益なシミュレーターになり得るものと考えている。今後、①において樹高・胸高直径が過小評価される要因を明らかにしていくとともに、他の地域での検証などを進めていく予定である。