| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-279  (Poster presentation)

モンゴル荒廃草原の緑化修復におけるChloris gayanaのシードコーティング技術の開発
Development of seed coating technology for Chloris gayana seeds to restore degraded Mongolian grassland

*服部紘依(東大・農), Undarmaa JAMSRAN(Mongolian Univ. of Life Sci.), 大黒俊哉(東大・農)
*Hiroe HATTORI(The University of Tokyo), Undarmaa JAMSRAN(Mongolian Univ. of Life Sci.), Toshiya OKURO(The University of Tokyo)

北東アジアの乾燥地では、市場経済化や人口増加に伴う過放牧や不適切な耕作等による草原劣化が課題であり、環境修復のための緑化技術開発がされてきた。特に播種は、低労力で大面積に適用可能である一方、降雨や表層土壌条件等の影響を受けやすく、適用例は限られる。一方、農業・園芸分野では、種子形状の均質化や発芽促進、生育改善を目的とした種子コーティング技術の開発が進み、乾燥地の緑化現場が抱える諸課題を解決する技術として期待されている。しかしその施用には、対象地環境や使用種子、目的に合わせたコーティング方法の適正化が必要である。草原劣化が進むモンゴルでは近年、在来種の播種による環境修復が検討され、候補種選抜も行われているが、種子コーティングを含め、ローカルな技術適正化は未着手である。そこで本研究では、モンゴルステップに自生し環境ストレス耐性や迅速成長性を有するイネ科一年草Chloris属種子を用いた種子コーティング方法の開発、発芽・生育促進に向けたコーティング材料選抜と検証を目的とした。
まず、既存のコーティング方法と材料 (珪藻土とヒドロキシエチルセルロース: HEC) を用いて、最適な添加量および濃度を検討した。次に、発芽を促進するコーティング剤として活性炭とジベレリン酸、生育を促進するコーティング剤として尿素とリン酸二水素カリウム (PDP) をそれぞれ用いたコーティング種子 (ペレット) を作成し、人工気象器内で発芽試験を行った。非土壌条件と土壌条件に播種した後7日間程度生育させ、発芽数および幼芽や幼根の伸長等を測定した。
その結果、珪藻土およびHECの混合については、2 % HECを0.4 mlずつ添加する方法が粒径2 ~ 4 mmのペレット作成に有効であることがわかった。また、活性炭施用により発芽開始日が早期化し発芽数が増大すること、尿素施用により幼芽丈の伸長が促進されること、PDP施用により幼根長の伸長が促進されることがわかった。


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