| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-280 (Poster presentation)
野生動物の個体数管理において、推定個体数にもとづき捕獲強化や、捕獲の上限設定が行われる。推定個体数は中央値などの代表値と信用区間などの推定誤差の形で表されるが、捕獲目標や捕獲上限数の設定においては代表値のみが着目され、推定誤差が意思決定に反映されることは少ない。特に精度が低い場合、代表値のみに基づく管理は個体数の減少リスクを高める危険性や、データセットやモデルの仮定によって判断が大きく変化する可能性もある。
兵庫県ではツキノワグマの保護管理を、隣接府県とデータを共有しながら地域個体群単位で実施している。過度な捕殺を避けるために、毎年の捕獲数を推定個体数に応じて段階的に設定しており、地域個体群の個体数が800頭以上の場合は個体数の12%(有害捕獲含めた上限は15%)、400頭以上800頭未満の場合は個体数の8%としている。過去の捕獲状況を評価すると、推定個体数の中央値を基準とした捕獲上限を超えるレベルでの捕獲が実施された事例が見られた。ただし、捕獲超過かどうかの判断はデータセットの更新やモデルの仮定に伴う僅かな推定値の変動でも大きく変化し、一定の評価は困難であった。一方、中央値ではなく推定値の事後分布に基づき捕獲上限設定を行った場合、推定値の変動に伴う捕獲上限の変化は抑制され、捕獲超過の度合いも低減した。