| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-281 (Poster presentation)
泥炭は植物遺体が冠水条件下で未分解のまま堆積した有機質土壌である。寒帯ではミズゴケやヨシなどの遺体が、熱帯では木本植物の遺体がその基質となっている。この泥炭土壌は開発の際に排水がおこなわれ、乾燥し、燃えやすいものとなる。熱帯域では開発により火災が頻発し、温室効果ガスの放出や煙害などが生じ深刻な環境問題となっている。本研究ではこのような状況に鑑み、泥炭の保水性や燃焼特性を計測した。
北海道石狩郡当別町において泥炭の不攪乱試料と攪乱試料を0~1mまでの深さで採取した。不攪乱試料は、飽水と乾燥を繰り返し体積と重量の変化を測定した。攪乱試料については真比重並びに腐植化度の測定と熱重量分析を行った。
取得した泥炭の実容積は7.5%(sd:1.9)と非常に低い値となっていた。初期飽和後の最初の乾燥で体積が初期の33%(sd:6.4)程度まで減少した。この泥炭を再膨張させると体積は初期の48%(sd:8.5)程度まで回復した。また、初期飽和時の含水比は8.3(sd:1.5)となっていたが、再飽和時の含水比は2.4(sd:0.7)まで低下した。初期飽和時・再飽和時の含水比は、実容積が高くなるほど有意に低下していた。初期飽和時の含水比・再飽和時の含水比などは採取された泥炭の深さとは独立であった。これらの結果から泥炭の飽水・乾燥に伴う物理的な性質は泥炭の実容積と関係があることが明らかになった。
一方で採取した泥炭の熱重量分析を行った結果、下層の泥炭の方が熱分析終了時点での残存重量(炭化量)が小さいことと発熱量が大きいことが明らかになった。以上の結果より、泥炭の保水性にかかわる性質には実容積など物理的性質が影響を与えている一方で、乾燥した泥炭の燃焼特性は泥炭の位置する深さと、それに伴い変化する泥炭の基質や分解の進行度に影響されることが明らかになった。