| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-282  (Poster presentation)

里山生態系における有機物残渣の炭化(バイオチャー)による炭素隔離の試み
An attempt at carbon sequestration with carbonization of organic residue (biochar) on a satoyama landscape

*友常満利, 依田真由, 進藤恵太, 関川清広(玉川大・農・環境農)
*Mitsutoshi TOMOTSUNE, Mayu YODA, Keita SHINDO, Seikho SEKIKAWA(Tamagawa Univ.)

 近年、有効な温暖化防止策の一つとして、有機物を炭化させたバイオチャーの活用が注目されている。都市域に残された緑地(植生)には未利用の有機物資材(有機資材)が多く存在するが、その存在量や各資材の炭化率などについての情報はほとんどない。本研究では、都市域の緑地のうち里山として玉川学園キャンパスを例に、キャンパス内に存在する様々な緑地から採取できる有機資材量と、各資材の炭化率を明らかにし、温暖化対策に向けた緑地の利活用(植生管理)について議論した。
 調査対象は、キャンパス内で面積的にまとまりがあり、多くの有機資材を採取可能な緑地5タイプとした(コナラ林、ヒノキ林、モウソウチク林、シバ地、アズマネザサ地)。各緑地において、単位面積当たりの有機資材量をコドラート法により測定した。各緑地から得られた有機資材を用いてバイオチャーを作出し、炭化率を算出した。さらに各緑地面積とバイオチャーの炭素含有率から、キャンパス内で作出可能なバイオチャーの総量と炭素隔離量を推定した。
 単位面積当たりの有機資材量は緑地タイプによって約0.1~0.9 kg D.W. m2となり、コナラ林で最も少なく、シバ地で最も多かった。炭化率は資材の種類によって約10~80%となり、コナラ材で最も高く、モウソウチク材で最も低かった。資材量は資材のサイズや緑地の管理状況などによって、炭化率は資材の質に加えて炭化炉の種類や炭化作業時の複数の要素(資材の乾燥状態、炭化時間、気温)などにより、いずれも大きく変動した。これらの結果、キャンパス内 (63 ha) で作出可能なバイオチャーの総量は約5 Mg、炭素隔離量は4 Mg弱と推定された。このような手法に基づく炭素隔離をより効果的に実現するためには、炭化にともなう作業工程の改善を図り、炭化率を向上させることが重要であると考えられた。


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