| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-285  (Poster presentation)

枯死木は炭素蓄積と多孔菌類の多様性を同時に維持するのか:マレーシアでの事例
Dose coarse woody debris provides cobenefits between carbon stock and fungal diversity in Malaysian forest stands?

*山下聡(森林総研), Habibah SALLEH(FDS), Mohd Effendi WASLI(UNIMAS), Mohamad Azani ALIAS(UPM), 市岡孝朗(京都大), 田中憲蔵(国際農研), 市栄智明(高知大)
*Satoshi YAMASHITA(FFPRI), Habibah SALLEH(FDS), Mohd Effendi WASLI(UNIMAS), Mohamad Azani ALIAS(UPM), Takao ITIOKA(Kyoto Univ), Tanaka KENZO(JIRCAS), Tomoaki ICHIE(Kochi Univ)

森林生態系には,複数の生態系サービスを同時に提供することが強く期待されている。熱帯雨林は巨大バイオマスと高い生物多様性で特徴づけられ、炭素蓄積と多様性の維持機能を両立させた森林管理が期待されている。そこで本研究では、マレーシアの半島部及び島部の熱帯雨林原生林6林分と二次林19林分(林齢12-81年)で、粗大木質リター(Coarse woody debris.以下CWD)中の炭素蓄積量とCWD上に発生していた多孔菌類の多様性指標の間に正の相関性があるかどうかを調べた。CWDの平均炭素蓄積量は、一次林で48.8 Mg/ha、二次林で12.3 Mg/haと推定された。一次林と二次林のデータを合わせた場合、多孔菌類の多様性は、CWDの炭素蓄積量とともに増加した。二次林のみでは、CWDの炭素蓄積量は林齢とともに増加したが、多孔菌類の多様性については、林齢やCWDの炭素蓄積量が同程度の林分であっても林分間で大きく異なり、林齢やCWDの炭素蓄積量の増加による有意な増加はみられなかった。これらのことから、原生林は生物多様性と炭素蓄積量の保全にとって極めて重要であり、CWDの炭素蓄積量が高い老齢二次林は多孔菌類の多様性を高く維持できる可能性があるものと考えられる。


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