| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-289  (Poster presentation)

亜熱帯林の林床における菌類群集の空間パターン
Spatial patterns of fungal communities on a subtropical forest floor.

*松岡俊将(京都大学), 大園享司(同志社大学)
*Shunsuke MATSUOKA(Kyoto Univ.), Takashi OSONO(Doshisha Univ.)

森林林床において、菌類は植物遺体を始めとする有機物分解や植物との相利共生的な養分交換などを通じて、物質循環や植物の成長・生存といった生態系機能を駆動している。熱帯・亜熱帯林では、落葉から腐植層にかけた林床の有機物蓄積が少ない。こうした基質間では、定着している菌類の組成が異なると考えられるが、基質ごとの種組成やその空間パターンを比較は限られている。
我々は、沖縄県本島北部の亜熱帯林常緑樹林において、優占樹種であるスダジイとイジュの落葉、腐植(FH)層、ヤンバルオオフトミミズの糞塊中に存在する菌類組成とそのパターンを比較した。野外サンプリングは2009年の7月に、0.05 haの調査プロット内の16地点で行った。落葉は、選択的なリグニン分解により一部に漂白の認められるものを採集し、非漂白部と切り分けることで分析に用いた。野外ではサンプリング地点の空間座標を記録し、土壌のpH、含水率、開空率を測定した。菌類相は、MiSeqを用いたアンプリコンシーケンスにより、ITS1領域の配列を決定することで評価した。得られた配列は97%の相同性閾値に基づき操作的分類群(OTU)にまとめた。各OTUについて、データベースと比較することで、分類群や機能群の推定を行った。
その結果、合計1693 OTUが検出された。機能群が推定できた中では、腐生菌と外生菌根菌が比較的多様であった。OTU組成は、基質により異なっており、特に落葉とFH層・糞塊の2タイプで大きく異なっていた。さらに、FH層や糞塊では落葉に比べてサンプル間でのOTU組成のばらつきが少なく、プロット内では組成は比較的均質であることが示唆された。一方、組成の空間的なばらつきと関連する要因は基質により異なったが、いずれの基質においてもサンプリング場所間の距離の影響が検出され、空間的に近い場所ほど組成が似ているという空間構造を持つことが明らかになった。


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