| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
シンポジウム S05-3 (Presentation in Symposium)
サトイモ科のオウゴンカズラ(Epipremnum aureum)は東南アジアを原産とした園芸植物である。近年、観賞用に持ち込まれた国で野外に捨てられ、野生化していることが問題となっている。日本でも、琉球諸島で野生化した個体がみられ、世界遺産地域を有する奄美大島や徳之島でも海岸林の植生に大きな影響を与えている。これらの地域では、現在、駆除の取り組みが行われているが、植物体の除去後に取り残した植物体が再生する事案が確認されており、この対応を検討する上で、まず、オウゴンカズラの再生様式を明らかにする必要がある。そこで、本研究では、オウゴンカズラの植物体再生に対する環境条件および植物体サイズの影響を明らかにすることを目的とした。この目的を達成するため、徳之島の3か所の海岸林において、異なるサイズの植物体(葉が1枚付いた蔓、葉が4枚付いた蔓、葉が8枚付いた蔓)を3つの環境(林内、林縁、林外)に2021年6月に設置し、その生存と再生量(葉、蔓、根の変化量)を2か月後に観察した。その結果、植物体のサイズに関わらず林外に設置した植物体はほとんど枯死した。林縁や林内では、設置した植物体の多くが生存したが、初期の生重量が4.5gの植物体も生存できていた。植物体の再生は、生存した植物体のほとんどで観察され、葉、蔓、根の再生量は、初期の植物体サイズが大きいほど増加した。蔓の再生量は林縁と林内の間で差はみられなかったが、葉と根の再生量は、サイズの大きな植物体で、林縁よりも林内に設置されたものの方が高くなった。以上の結果から、林縁や林内など光量が少ない環境であれば、オウゴンカズラの植物体は再生可能であることが明らかとなった。植物体サイズが大きいほど再生量も多くなったが、一方で、かなり小さな植物体でも再生できることが示された。野生化したオウゴンカズラを除去する作業では、どんなに小さな植物体でも、林縁や林内に残さないことが薦められる。