| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


シンポジウム S06-3  (Presentation in Symposium)

弱電気魚の電気パルス信号の解読
Decoding electric pulse signals from socially interacting electric fish

*福富又三郎, Bruce A CARLSON(ワシントン大学)
*Matasaburo FUKUTOMI, Bruce A CARLSON(Washington Univ. in St. Louis)

多様で複雑な動物のコミュニケーションを、我々はどのようにして解読できるだろうか?英和辞典のような辞書は残念ながらまだ存在しない。したがって、彼らの発する信号と行動を追跡し、徹底的に定量化し、それらの関連を探るほかない。本研究が着目するアフリカ産のモルミルス亜科 (mormyridae) 弱電気魚は、尾部に特殊な電気器官をもち、そこから微弱な電気パルスを発し、他個体と交信する。電気パルスの波形は個体によって一定であり、そのため彼らのコミュニケーション信号は1か0かのシンプルな時系列によって表現できる。一方、弱電気魚は発生させるパルスの時間間隔を柔軟に変化させることができ、さまざまな時間パターンと魚の行動・状態との関連がこれまでに示唆されてきた。しかしながら自由遊泳する複数個体の電気パルス信号と行動を長時間追跡することは技術的に困難であったため、コミュニケーション信号と行動の関係が、個体間相互作用を通してどのように変化していくかは不明な点が多い。そこで我々は、自由遊泳中の2個体から記録された電気信号を99.9%以上の精度でそれぞれの個体に紐付けるアルゴリズムを作成した。さらに動画解析ソフトであるUMATrackerとDeepLabCutを組み合わせて使用することで、2個体の姿勢をトラッキングすることに成功した。本発表では、これらの時系列データの解析を通してわかってきたコミュニケーション信号と行動、さらに個体間の社会関係との関連についての結果を紹介したい。


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