| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
シンポジウム S06-6 (Presentation in Symposium)
鳴禽類は多様で美しい発声行動を見せることから、聴覚信号、すなわち歌の研究が盛んに行われている。一方で、歌と同時に行われる身体運動、すなわちダンスに関しては、コミュニケーション信号としての役割を実証的に検証した研究は少ない。ルリガシラセイキチョウ(Blue-capped cordon-bleu, Uraeginthus cyanocephalus)は社会的一夫一婦制の鳴禽類で、雌雄が歌いながら巣材を咥え、ジャンプを繰り返すという複数の行動要素からなる求愛ディスプレイを行う。彼らの求愛行動をハイスピードカメラで撮影したところ、ダンスの際に行うジャンプにはヒトのタップダンスに類似した高速運動が含まれていることが明らかになった。飼育個体と野生個体を用いた観察結果から、この行動は視覚的なアピールに加え、音や振動といった複数感覚にまたがる信号の産出に寄与することが示唆されている。また、セイキチョウは状況に応じて歌とダンスを組み合わせる時と歌のみを発する時があるが、この時の信号受信者の反応を調査したところ、歌のみの時よりも歌とダンスを組み合わせた時に反応性が高まることが分かった。更に、雌雄を隣接したケージに分け、ケージ間で止まり木を接続した場合と切断した場合(=振動が隣のケージに伝わる状態と伝わらない状態)で求愛行動および信号受信者の行動を解析した結果、振動の有無が信号受信者の滞在時間や反応に影響を与えていることが判明した。一連の結果は、歌に付随するダンス行動とそれによって発せられるマルチモーダルな信号が、信号受信者の反応を高め、より効率的な求愛コミュニケーションに寄与していることを示唆する。