| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
自由集会 W09-5 (Workshop)
グリーンアノールの防除に用いられている、粘着トラップや防除フェンスには、誘引や忌避の効果は付加されていない。グリーンアノールに対して誘引・忌避効果のあるものを明らかにすることは、防除効率の向上に貢献すると考えられる。グリーンアノールは視覚に加えて聴覚も優れており、方角も認知する。そこで、環境研究総合推進費のプロジェクト、「特定外来生物グリーンアノールの誘引・忌避に有効な音声の解明」では、主に音声を用いたグリーンアノール対策手法の開発研究を行った。誘引・忌避両方を視野に入れ、様々な音声を聞かせたときのグリーンアノールの反応を室内実験により検証した。誘引効果のある音声は認められなかったが、草刈り機の機械音や、原産地の捕食者であるアカオノスリの地鳴きの音声を忌避することが明らかになった。アカオノスリの鳴き声は、90dBという大音量で、30秒以内の間隔で鳴らす必要があった。実際に野外に止まり木を設置し、アカオノスリの鳴き声を再生したところ、音声有りの場合、止まり木に上る個体数が減少し、忌避効果が確認された。今後は、音声を使用する場合の住民への騒音被害、在来生物へのかく乱の程度の検証が必要である。本プロジェクトでは、音声以外にも、グリーンアノールは青色を忌避すること、生きたハエには誘引されるが、ハエを模したルアーには単純な動きを付加しても誘引されないこと、同種生体よりもフィギュアに誘引される個体が多いことなどを明らかにした。これらの知見を野外の防除に応用するには、汎用青色製品による忌避効果の確認、複雑な動きを付加したルアーによる誘引効果の確認、フィギュアの雌雄やサイズといった属性による誘引効果の比較等が必要である。