| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨
ESJ70 Abstract


自由集会 W18-1  (Workshop)

エコロジーとアート、自然共生や生物多様性をテーマとするアートの創作事例
Ecology and art, Examples of art creation on the theme of coexistence with nature and biodiversity

*多田満(国立環境研究所)
*Mitsuru TADA(Nat. Inst. Environ. Stud.)

生態学は科学、エコロジーは人文学(思想・倫理)の対象となるものである。たとえば、生態学(生態系)の観点から生物多様性の価値(生態系サービス)と人間の心理や行為の関連性を明らかにすること、人間対自然の二項対立を越え、人間が生きていくための場所や関係性を考えることがエコロジーである。よって、生きものが「いかに生きているか」を知るのが生態学の役割であるなら、人が「いかに生きていくか」を考えるのがエコロジーの役割であろう。それにより、人びとの内発的な行動(ライフスタイル)につながる「いかに生きていくか」という意識や価値観の基盤も確立されると考えられるからである。一方、ここでいうアートの役割は、混沌とした状況や不透明な事象から、真実らしきものや本質と見なし得るものを探究発見すること(作品化)であり、自然を対象とする生態学の営みにも似ている。
ところで、気候変動と生物多様性がクローズアップされる現代、「アートはエコロジーをどう扱うか?」が問われている。気候変動を主要テーマとするオラファー・エリアソン氏の「ときに川は橋となる」展(東京都現代美術館、2020年)において、作家の役割は複雑に絡まるモノや事象を、芸術言語を用いて翻訳し、人びとに共有、共感できるかたち(作品)にすることであり、その芸術の経験は、観客が目の前の作品にどのようなリアリティを感じ、それによって世界に対する見方をどう変えていくのかという点と深く結びついている。本集会では、エリアソン氏の作品とともに自然共生や生物多様性に関連する知足美加子氏(九州大学芸術工学部教授)によるArt Garden《植物の一年時計 (Seasonal Flowering Clock)》2022年と《「植物の多様性」になる(その試み)》第3回環境アート展「BOTANIC MAN─植物人」(茨城県つくば美術館、2018年)の作品をそれぞれ紹介する。


日本生態学会