| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) B03-02 (Oral presentation)
なぜ植食性昆虫の多くがスペシャリストであり、またなぜ一部の種がジェネラリストであるのかは、進化生物学における難問のひとつである。とくに、スペシャリスト種の餌植物が生理的に好適な餌でない場合が珍しくない。本発表では、2種の昆虫間での餌植物の選好性進化についての新たな数理モデルを紹介する。餌植物の選好性の進化は群集動態に依存することが知られるため、モデルでは群集動態の効果を明示的かつ包括的に検討する。解析の結果、群集動態に正の頻度依存と負の頻度依存の両方がはたらく場合にスペシャリストとジェネラリストへの分化が見られることが明らかとなった。これは正の頻度依存と負の頻度依存の相互作用により、多くの安定平衡点(最大9点)が生じるためである。また正の頻度依存により、生理的に不適な餌植物への選好性が、初期条件依存的に進化しうる。そのため、このモデルのもとでは選好性とパフォーマンスが一致するとは限らない。このモデルは、直観に反する実証的なパタンを説明するとともに、ニッチ幅進化の現象論的なモデルへメカニスティックな説明を与える。