| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) C02-01  (Oral presentation)

鵜飼のウミウの生態学:馴化過程と飼育下の生活史、個体間関係【B】【S】
Ecology of Japanese Cormorant Used for Cormorant Fishing: Habituation Process and Life History and Individual Relationships in Captivity【B】【S】

*亀田佳代子(滋賀県立琵琶湖博物館)
*Kayoko O. KAMEDA(Lake Biwa Museum)

 ウミウ(Phalacrocorax capillatus)は、日本周辺の極東地域にのみ分布する海鳥で、繁殖期は本州中部以北で過ごし、繁殖が終わると南に移動し越冬する。他の多くの海鳥と同様、海洋で魚を捕食し、海岸の岸壁や海洋島にコロニー(集団繁殖地)を形成し地上に営巣する。野生ではこのような生活史を持つウミウは、日本の鵜飼のウとして長年使われてきた。中国の鵜飼では、カワウ(Phalacrocorax carbo)を飼育下で繁殖させて使うが、日本では野生のウミウやカワウを捕獲し馴らして使い、飼育下で繁殖させることはない。つまり、民俗学の分野でいう「半家畜化(semidomestication)」に相当する。人間にとってのウミウの半家畜化の意義については民俗学的研究があるが、半家畜化されたウミウの行動や生態について、動物行動学や生態学の視点から注目した研究は見あたらない。鵜飼のウミウの行動生態を把握することは、野生のウミウの行動や生態の理解にもつながる可能性がある。そこで本研究では、鵜飼のウミウの馴化過程と生活史、個体間関係について、実態を明らかにすることを目的とした。
 調査は岐阜県岐阜市の長良川鵜飼を行う鵜匠宅で行い、定期的な終日観察と馴化過程におけるビデオ撮影により行動を記録した。この鵜匠宅では、複数のウを一緒に鳥屋で飼育しているためウ同士が接触する時間が長く、馴化過程においてもウ同士の馴れが重要な要素の一つとなっていた。鵜匠は「カタライ」と呼ばれるペアを形成するが、このペアは日中も一緒にいることが多かった。遺伝解析によりこのペアはオス同士であることがわかっているが(亀田ら 日本鳥学会2022年度大会発表)、繁殖行動に似た行動も観察された。このような同性間性行動は野生の鳥でも記録があり、鵜飼における行動との比較はこれらの行動の理解に役立つと思われた。


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