| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) C02-04 (Oral presentation)
日本では「理科離れ」「科学離れ」が指摘され,「科学技術白書」が科学技術コミュニケーションの促進を提言し,展示館ないし普及教育施設としての博物館施設の役割がますます高くなると考えられた。自然史博物館はサイエンスコミュニケーションの実践の一環であり,一般の人々,学生,研究者などに科学的な知識や好奇心を提供する場である。その中でも,サイエンスコミュニケーションのツールであるサイエンティフィックイラストレーション(Scientific Illustration,以下:SI)は重要な役割を果たしている。
SIという分野に対する社会的認知度はまだ低く,関係のある調査研究も少ない。需要がたくさんあるとしても,学芸員が自ら制作するもしくは展示専門業者やイラストレーターに依頼することが多い。日本の博物館を実地踏査した結果,SIの芸術性はともかく,現状では情報を伝えにくいSIや分かりにくいSIが多く存在していることが判明した。そうした現状を改善するために,制作の問題点を探る必要がある。問題点に対応する想定可能な原因及び解決策を提案する。それは,1つの解決策として,SIの応用傾向によってグループ分けし,各グループの特徴と構成を明らかにすることであり,より科学的で,効率的な制作方法の基礎になると考える。
2023年5月から8月の間に,日本における4館の自然史博物館及び自然史部門のある総合博物館を抽出して現地調査を行い,常設展示で応用されているSIを収集した。収集したSIを定量的分析法でパターン分類した結果,全てのSIを4つのグループに分けることができ,各グループの特徴が明らかになった。また,4館のグループ散布図を比較して同異点を分析することで,自然史博物館にとって必要なSIの属性をある程度引き出す可能性を見出すことができたと考える。