| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) C03-01 (Oral presentation)
昆虫は花粉や蜜などの資源を得るために花を訪れる。多くの花において資源は花の中心にあるため、花に降り立った昆虫は、花の中心を認識し、そこにたどり着く必要がある。昆虫が蜜標(nectar guide)と呼ばれる花弁の模様によって蜜源の位置を認識することはよく知られているが、それ以外の認識機構はほとんど知られていなかった。
カザリショウジョウバエ(以下カザリ)は、野外に咲くノアサガオやモミジバヒルガオに訪花することが知られる。花に降り立ったカザリの多くはまっすぐに花の中心に向かうことから、彼らは花の中心を認識する機構を持ってると推察される。しかし、彼らがどのように花の中心を認識しているかは全く解明されていなかった。
まず本研究では、花の色や形が中心の認識に重要かを調べるために、アサガオを模した造花をカザリに提示した。生花よりも少し頻度は低いものの、多くの個体が造花の中心に定位したことから、中心の認識には花の色や構造が最も重要であることが示唆された。一方、触角を切除しても中心への定位が変化しなかったことから、触角からの感覚入力は中心の認識に必須でないことも示された。中心部を切除した場合でもカザリが中心に向かったことから、中心の認識には花の周縁部の構造が重要であると考えられた。そこでカザリに単純な漏斗形を提示したところ、角度の急な漏斗形では中心部に向かう一方で、角度のない円形では中心部にほぼ向かわなかった。このことからカザリは立体的な漏斗状構造によって花の中心を認識していることが示唆された。カザリが漏斗状構造をどのように認識しているかを調べるために、赤外光下でカザリの視覚を制限して実験を行った。視覚制限は漏斗形での定位を抑制しなかったことから、カザリは視覚以外の感覚で漏斗状構造を認識し、花の中心に定位していることが示唆される。