| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) C03-07 (Oral presentation)
草原生態系は地表の約4割を占め、数多の重要な生態系サービスを提供している。こうした生態系サービスは、植物・節足動物などの生物群集が基盤である。しかし、草原生態系の主な土地利用形式である放牧は、生物群集に大きな変化をもたらす。持続的な草原生態系の利用に向けて、放牧による生物群集への影響評価が行われている。
放牧影響の検証は植物群集において数多くの研究がされている。例えば、家畜の摂食や踏圧を介して、植物種は小型化・資源獲得戦略を取るようになり、植物群集組成は、植生高は低く・比葉面積は高くなる傾向にある。こうした放牧影響は乾燥度により左右されることが近年の研究から分かっており、放牧により、湿潤環境下では植生高は著しく低く・比葉面積は高くなり、乾燥環境下では植生高は僅かに低く・比葉面積は低くなることが示唆されている。
このように放牧による植物群集への影響が検証されているが、節足動物群集への放牧影響の検証は相対的に少なく、乾燥度に応じた放牧影響の変化については不明瞭である。植物は節足動物の餌資源や生息地となるため、乾燥度に応じた植物群集への放牧影響の変化に応じて、節足動物への放牧影響は変化することが予想されるが、これを検証した研究例は存在しない。地域の乾燥度条件に応じて、適切に植物・節足動物群集への放牧影響を評価するために、検証が必要である。
こうした背景から、本研究では、乾燥度の異なる3つの植生タイプ(森林ステップ・ステップ・砂漠ステップ)毎に放牧・植物・節足動物群集組成の連関関係を検証し、これを明らかにすることを目的とした。放牧が盛んに行われるモンゴル草原の植生タイプの異なる12地点において、植物・節足動物群集組成の調査を行った。
検証した結果、3つの植生タイプ毎に、放牧による植物群集(植生高・比葉面積)への影響は異なり、またその差異に応じて節足動物群集組成への影響は変化した。