| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) C03-09 (Oral presentation)
近年、気候変動や特定の野生動物の増加により、マダニやマダニ媒介感染症の分布拡大が世界的な問題となっている。日本においても、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)等の媒介者である南方系のマダニ類が、既知の分布域より北方で確認されつつある。しかし、東北地方における知見は少なく、宿主である野生動物との関係についても未解明である。とりわけ東北地方の日本海側では、近年イノシシが進出した事が確認されており、南方系マダニ類の宿主として機能している可能性がある。また、元々生息していたツキノワグマの個体数の増加も懸念されている。本研究では、東北地方におけるマダニと野生動物の寄生者-宿主関係の一端を明らかにするために、当該地域に近年新たに定着したイノシシと、元々生息していたツキノワグマの寄生マダニ相を評価した。2021年及び2023年にイノシシ1頭、ツキノワグマ3頭を捕獲し、寄生しているマダニ類を採取、実体顕微鏡を用いて種同定を行った。その結果、イノシシからは南方系の種であるタカサゴキララマダニ (Amblyomma testudinarium)及び、カクマダニ属の種(Dermacentor bellulus)を含む計3種、ツキノワグマからはD. bellulusを含む計2種が確認された。この結果は、当該地域に新たに進出したイノシシ及び、元々生息していたツキノワグマの双方共に、これまで生息していなかった南方系マダニ類の宿主として機能している可能性を示すものである。