| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) C03-10  (Oral presentation)

発育環境がキイロショウジョウバエの翅干渉色パターンに与える影響
Effect of developmental environments on wing interference patterns in Drosophila melanogaster

*高橋一男(神奈川大学)
*Kazuo TAKAHASHI(Kanagawa University)

双翅目や膜翅目の昆虫の翅は黒色の背景で観察すると鮮やかな薄膜干渉色の発色が見られる。そのパターンはWIPs(Wing Interference Patterns)と呼ばれており、分類形質としても注目されているが、種内変異の生成要因は未解明である。一般的に、昆虫の形態形成には幼虫期の栄養条件(餌のカロリーやタンパク質:炭水化物比)や温度条件が影響する事が知られており、これらの環境条件が翅の形態形成を通してWIPsにも影響する可能性がある。また、少なくともショウジョウバエにおいては、WIPsが配偶者選択に重要な役割を果たしている可能性が示唆されており、好適な環境で育った適応度の高い個体と劣悪な環境で育った低い個体でWIPsが異なっている可能性もある。しかし、このような幼虫期の環境条件が成虫のWIPsに与える影響は未解明である。本研究では、キイロショウジョウバエを研究材料として、幼虫期の発育環境(栄養と温度)がWIPsに与える影響を明らかにすることを目的として研究を行った。幼虫期の栄養条件として、カロリー濃度(500~1500 kcal/L)とタンパク質:炭水化物比(1:2~1:12)を設定し、それらを組み合わせた餌条件で飼育を行い、羽化成虫をサンプリングした。これらの個体について、ハイパースペクトルカメラ画像を用いてWIPsの定量化を行った。その結果、タンパク質:炭水化物比と飼育温度はWIPsに有意に影響することが分かった。また、幼虫の発育環境は適応度にも影響したため、WIPsがその個体の適応度を示す指標として、配偶者選択に活用される可能性が示唆された。


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