| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) D01-03  (Oral presentation)

地すべり後に生じたアマモ場の追跡調査:潮間帯オオアマモの由来と推移を探る【B】
Follow-up research on seagrass bed formed after coastal landslide: what happens to intertidal Zostera asiatica【B】

*伊藤(阿部)美菜子(国立科学博物館, 北海道大学), 田中法生(国立科学博物館, 筑波大学), 仲岡雅裕(北海道大学)
*Minako Abe ITO(NMNS, Hokkaido Univ.), Norio TANAKA(NMNS, Univ. of Tsukuba), Masahiro NAKAOKA(Hokkaido Univ.)

アマモ場は多様な動植物の生息場所や産卵・稚仔魚の生育場として利用される重要な生態系である。アマモ場が形成される沿岸域ではその地形の連続性から陸域の影響が海域にまで及ぶことがあり、崖崩れや地すべりはその代表的な例である。北海道厚岸町アイニンカップは海草オオアマモ(Zostera asiatica)の世界で唯一の潮間帯群落が生育する一方、地域一帯が地すべり地帯として知られており、2021年5月には地すべり跡地に分布を拡大した潮間帯オオアマモ群落が発見された。2021年の調査より、地すべりの影響を受けた群落では影響を受けていない群落よりも有意に繁殖率が高く、花序や種子の成熟が遅い傾向が示唆された。しかしながら、このような形質の違いが何に由来するのか、また地すべり影響により変化した形質は長期的に維持されるのかなど不明な点が多く残されている。
本発表ではアマモ場に対する地すべりのより長期的な影響評価と関連する要因の探索を目的に、2021年に地すべりの影響を受けた潮間帯オオアマモ群落の追跡調査を行った結果を報告する。調査は2021年と同様、オオアマモの繁殖期(6~8月)に行った。ドローンを用いた分布調査の結果、2021年8月以降新たに地すべりが生じており、2023年6月時点では地すべり跡地に拡大した群落のほとんどが消失したことが判明した(約18㎡→約0.4㎡)。新たに地すべり影響ありとして近傍の群落を選定し、2021年の影響なしと同じ地点の群落と比較したところ、2021年と同様に地すべりの影響があると株密度が低く、成熟が遅い傾向が見られた。対して、草体のサイズや花序の数が影響の有無で有意に異なるなど、2021年とは異なる結果も得られた。これらのことより地すべりが頻繁に起きる地域ではオオアマモ群落の安定的な拡大は難しく、地すべりによるオオアマモへの影響は数年単位で持続することが示唆された。


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