| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) D01-05  (Oral presentation)

マテバシイにおける花粉管伸長・胚珠発達フェノロジーから紐解く受精遅延の進化
Evolution of delayed fertilization revealed by seasonal pollen Tube growth and ovule development in Lithocarpus edulis

*社川武徳(九州大学), 小川浩太(九州大学), 金岡雅浩(県立広島大学), 佐竹暁子(九州大学)
*Takenori SHAGAWA(Kyushu Univ.), Kota OGAWA(Kyushu Univ.), Masahiro KANAOKA(Pref. Univ. of Hiroshima), Akiko SATAKE(Kyushu Univ.)

 被子植物では、受粉から受精までに数日以上の期間を要する「受精遅延」が複数の分類群で知られている。その中でもブナ科では、受粉から受精に至るまで数週間で完了する種から1年以上もの期間を要する種が存在している。ブナ科において、受精遅延は花粉間の競争を強める効果があると考えられてきたが、開花期の多様化を促進し、繁殖に不適な季節を避けて受精を同調させる効果もあることが指摘されている。開花期の異なる雌花を対象に開花から受精に至るまでの花粉管伸長・胚珠発達のフェノロジーを比較することで、配偶子の挙動や非生物的環境と受精遅延との関係性を明らかにすることができる。
ブナ科のマテバシイ(Lithocarpus edulis)は、主に5月から6月に開花するが、9月から10月にかけて一部の個体が開花することが知られている(以下では、前者を春咲、後者を秋咲と呼ぶ)。本研究では、九州大学伊都キャンパスのマテバシイを対象に、その春咲・秋咲の雌花を毎月採取し、その切片を作成することで、花粉管伸長・胚珠発達の季節的変化を観察した。
花粉管の観察結果から、春咲・秋咲によらず受粉後2ヶ月以内に花粉管は柱頭下部の組織に達し伸長を停止させることが明らかとなった。さらに、春咲の雌花では開花翌年の5月に一部の花粉管は伸長を再開し、6月に胚嚢に到達していた。続いて、胚珠の観察結果から、春咲・秋咲によらず開花翌年の2月から4月にかけて胚珠原基の分化、5月に胚嚢形成、6月に胚嚢の成熟が起こることが明らかとなった。
以上の結果から、マテバシイの雌花では開花時期によらず、繁殖に不適な冬における花粉管伸長・胚珠発達を避け、春咲・秋咲の雌花間で胚珠の発達段階を同調させることで、受精のタイミングも同調させていると考えられる。


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