| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-06 (Oral presentation)
グリーンインフラストラクチャー (Green Infrastructure、以下「GI」とする)は、自然生態系が持つ多様な機能を活かして社会資本整備や国土づくりを行う新たなインフラの概念であり、従来型のインフラに替わる新たな概念として欧米を中心に近年広まってきている。GIが従来型のインフラと比較して優れている点には、複数の生態系サービスの発揮(多機能性)と、維持管理にかかるコストの低さなどが挙げられる。近年、都市緑地をGIと捉え、もともと期待されてきた目的に加えて、様々な副次的機能を評価する動きが広がりつつある。本研究は、GIとしての都市緑地が持つ副次的な機能として、汚染物質の吸収による、大気浄化機能を評価することを目的として、都市緑地に一般的な樹種の微量金属元素の吸収能力を定量評価した。2022年12月から2023年1月まで、東京都立大学南大沢キャンパスにある都市緑地で、シラカシ、コナラ、イロハモミジ、ケヤキの落ち葉を採取し、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)を用いて、落ち葉に吸収された4つの微量金属元素(Cd:カドミウム、Cu:銅、Pb:鉛、Ni:ニッケル)の含有量を測定した。その結果、分析ができなかったケヤキを除くシラカシ、コナラ、イロハモミジの3種が4つの微量金属元素を吸収していることがわかった。さらに、統計解析により、4つの微量金属元素における樹木の吸収能力が、シラカシ、コナラ、イロハモミジの3種間で異なることを明らかにした。また、1つの緑地に、微量金属元素の吸収能力が高く1年を通した微量金属元素の固定に優れる常緑樹のシラカシと、微量金属元素の吸収能力は低いが汚染物質を除去するための落ち葉の回収コストに優れる落葉樹のコナラが両樹種とも存在する状況は、それぞれの利点、欠点を補い合っている状況にあることを示唆した。