| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-07 (Oral presentation)
本調査地であるウラン (U) 鉱山跡地の鉱さいたい積場には, 一時貯留された坑水に重金属やUを含有しているが, ヨシの自生が確認されている. 本たい積場上流域のヨシは坑廃水が自然酸化されることにより殿物が形成される地点 (殿物集積部) に生育しているが, 下流域・湛水部のヨシに比べて, 1) 地上部の生長量は抑制されていること, 2) 節根周囲に黒色の金属沈着 (鉄プラーク) がほとんどないこと, が確認された. 以上から, 上流域・殿物集積部に生育するヨシはより高いストレス環境に生育していると考えられ, 鉄プラークを有する下流域・湛水部のヨシとは異なる重金属耐性機構を有している可能性が考えられた. また, 根に感染する内生菌は宿主植物の金属耐性を向上させることが報告されている. そこで本研究では, 上流域・殿物集積部に生育するヨシの重金属耐性機構及び内生菌の化学的機能の解明を目的とした.
元素分析及び局在観察の結果, ヨシは高濃度のFeやMnを酸化物として節根の表皮に蓄積していることが確認されたことから, 節根に毒性の低い不溶態のFeやMnを蓄積する物理的防御によって耐性を有すると考えられた. また, 根に含まれる二次代謝産物を分析した結果, ヨシは3-O-feruloylquinic acid の産生によって金属を解毒する化学的防御も有すると考えられた. 植物の重金属耐性に寄与する内生糸状菌の分離を行った結果, 出現率の高い上位2菌種においてsiderophore産生能及びMn酸化物形成能が確認された. 植物体内でsiderophoreは金属との錯体形成による毒性軽減, Mn酸化物は金属吸着による移行抑制を行うことで, ヨシの重金属耐性に寄与していると示唆された. 以上から, 本たい積場上流域・殿物集積部のヨシは節根において物理的及び化学的防御を機能させることでFe及びMn耐性を獲得し, 内生糸状菌の化学的機能が本耐性を増強させる可能性が考えられた.