| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-08 (Oral presentation)
調査地である鉱山跡地では土壌中に高濃度の重金属が残存しており, 植物にストレスを与えやすい環境となっている. 本研究の対象植物であるミゾソバは調査地の沼での自生が確認されており, 何らかの重金属耐性を有すると考えられた. 加えて一年生草本であるミゾソバには, 成長に伴う重金属耐性機構の変化が生じている可能性が考えられた. 一般に植物の重金属耐性機構として, 重金属解毒物質の産生による化学的防御, 細胞壁や液胞への重金属の隔離による物理的防御などが知られている. また, 植物組織内に生息する機能性微生物 (内生細菌) が, 宿主植物に重金属耐性を獲得させることが報告されている. そこで本研究では, ミゾソバ自身が有する重金属耐性機構の季節変化を解析する一方, 根に生息する内生細菌を考慮に入れ, 本植物の重金属耐性機構を総合的に解明することを目的とした. 各種分析の結果, ミゾソバは不定根及び枯死根に高濃度のFeを蓄積していることが確認された. ミゾソバは不定根において, 1) gallic acid, catechin類などのFe解毒物質の産生, 2) 細胞壁及び細胞内部でFeを隔離, することによるFe解毒機構を有していると考えられた. また, 不定根において, Fe解毒に関わるphenol性化合物への炭素投資量は花期である9月に有意に増加し, 9月にはFeに対する化学的防御をより機能させていると考えられた. 一方, 枯死根においてFe排出量あたりに使用した炭素量は7月に比べ8月及び9月において有意に減少したことから, 8, 9月においては排出へ使用する炭素量を抑制し効率的にFeを排出していると考えられた. さらに, 調査期間を通してミゾソバの不定根からFe解毒物質の産生能を有する内生細菌が分離された為, 内生細菌が本植物のFe耐性機構に関与している可能性が示唆された.