| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-09 (Oral presentation)
ススキは日本の多数の鉱山跡地に自生し、重金属耐性を有していることが報告されている。近年、内生菌が宿主植物の重金属耐性を増強させることが知られている。本調査の先行研究から、鉱山跡地に自生するススキの不定根から高頻度に分離された内生菌Phialocephala fortiniiは鉱山土壌で生育したススキの生長を促進し、重金属耐性を増強させている可能性が考えられた。本研究では、鉱山跡地において、P. fortiniiがススキの生長及び重金属耐性に与える影響を解明することを目的とし、P. fortiniiを包埋したゲルカプセルを使用して、自生するススキ苗を移植し、その根周辺に接種する野外実験を実施した。
2022年6月に、P. fortiniiを包埋したゲルカプセルをススキに接種した(接種区)。対照区として、ゲルカプセルのみを接種したススキ(対照区)を準備した。2023年8月にススキを採取しススキの生長量を評価したところ、P. fortiniiはススキの苗高の生長を促進することが確認された。ICP-OESで各組織の元素濃度を分析した結果、接種区に比べ、対照区のススキの地上部のAlとFe濃度が有意に高いことが確認された。P. fortiniiがススキの生長を促進した結果、ススキ体内の重金属濃度が相対的に低下することで、重金属の毒性が低下する可能性が考えられた。対照区に比べ、接種区のススキの不定根に含まれるSi濃度は高かったことから、Siが重金属を吸着し、地上部への移動を抑制することで、重金属毒性の軽減に寄与している可能性が示唆された。さらにHPLC-DAD分析の結果、重金属解毒物質であるクロロゲン酸の産生がP. fortiniiによって促進されることが明らかとなった。以上から、野外の鉱山跡地においてもP. fortiniiはススキの生長を促進し、重金属耐性を増強させていると考えられ、微生物資材としての利用可能性が示唆された。