| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-02  (Oral presentation)

鉱山跡地に自生するススキによるアカマツ実生の定着促進機構の解明
Clarification of mechanisms that Miscanthus sinensis contributes to survival of Pinus densiflora at a sedimentary site

*春間俊克(森林総合研究所), 山路恵子(筑波大学), 土山紘平(産業技術総合研究所, 筑波大学), Xingyan LU(Univ. of Tsukuba), 野路建太(筑波大学), 升屋勇人(森林総合研究所), 有馬孝彦(北海道大学), 富山眞吾(北海道大学)
*Toshikatsu HARUMA(FFPRI), Keiko YAMAJI(Univ. of Tsukuba), Kohei DOYAMA(AIST, Univ. of Tsukuba), Xingyan LU(Univ. of Tsukuba), Kenta NOJI(Univ. of Tsukuba), Hayato MASUYA(FFPRI), Takahiko ARIMA(Hokkaido Univ.), Shingo TOMIYAMA(Hokkaido Univ.)

調査地とした鉱山跡地では重金属澱物を堆積場で保管している。堆積場ではススキがパッチを形成すると共に、アカマツ実生の生育が確認された。ススキのパッチ内外に生育するアカマツ実生の生残率を比較したところ、パッチ内の生残率が高かったことから、ススキがアカマツ実生の定着を促進することが示唆された。そこで本研究ではススキによるアカマツ実生の定着促進機構を解明することを目的とした。堆積地における土壌に含まれる重金属濃度と土壌pHおよび地温を測定した結果、土壌は高濃度の鉄(Fe)を含有していた一方、pHは7.5と中性であった。また地温を測定したところ、ススキのパッチ内では土壌温度の日較差が抑制され、アカマツ実生への高温ストレスを軽減することが明らかになった。次にパッチ内外のアカマツ実生が含有するFe解毒物質を分析した結果、いずれに生育するアカマツ実生もcatechinおよびcondensed tanninを産生することでFe耐性を獲得していると考えられた。パッチ内外のアカマツ実生からは内生菌としてCeratobasidium bicorneAquapteridospora sp.が分離された。Aquapteridospora sp.はススキの根からも分離されたことから、ススキが内生菌の供給源となっている可能性が示唆された。一方、植物病原性を示すC. bicorneはパッチ外で枯死したアカマツ実生の根からも分離されたが、出現率は低かったことから、主要な環境ストレスは高濃度のFeと高い地温であることが示唆された。これらの結果から、アカマツ実生はFe解毒物質を産生することでFeストレス環境に適応しており、ススキはアカマツ実生を高温ストレスから保護すると共に内生菌を供与することで、堆積場におけるアカマツ実生の定着を促進することが示唆された。


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