| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) D02-06  (Oral presentation)

NO3:NH4バランスが野外藻類群集の光生理に与える影響【B】
Effects of NO3:NH4 balance on the photophysiology of natural algal communities【B】

*風間健宏(神戸大学)
*Takehiro KAZAMA(Kobe University)

農地や都市部の湖沼では、人間活動によって生じた様々な形態の窒素が流入する。NH4は、代謝において必要な電子がNO3より少ないことから、ラン藻や緑藻などの増殖を刺激する。一方、NO3は代謝において還元が必要であるが、強光下ではむしろ余分なエネルギーを逃がすシンクとして機能する。強光に強い珪藻では、他の藻類グループよりも積極的にNO3を取り込むことが知られている。しかし水中のNO3:NH4バランスが藻類群集全体の光生理や光合成活性へ与える影響は、明らかになっていない。そこで本研究は、 (1) NO3が相対的に多いほど、強光ストレスが低下し、光合成活性が高くなる。(2)(1)の効果は、季節的な種組成の変化に伴って異なる結果を生む、という2つの仮説を検証することを目的に、室内培養実験を行った。
兵庫県宝塚市の貧栄養ため池において、2023年4~9月に、表層水2Lをバケツ採水し研究室へ持ち帰った。動物プランクトンを除去した後、250 mLのポリカーボネートボトル15本に100 mLずつ分注した。次いで、NaNO3と(NH4)2SO4 を、NO3:NH4(モル比)が32:0、24:8、16:16、8:24および0:32になるよう添加し、全てのボトルにK2HPO4 2 μMを添加した。これらを120 μmol/m2/s、L:D=14:10、現場水温にて1日2回混合しながら96時間培養した。培養後、パルス変調蛍光計(Aquapen AP110-C, PSI)を用いて、0~1000 µmol/m2/sにおける光合成の指標パラメータ群(Fv/Fm、ΔF/Fm’、NPQ、PIABS)を測定した。
その結果、群集全体の光合成活性はNO3が高いほど強光下でも光合成活性が高くなり、7~9月に差が大きくなった。発表では、各光合成パラメータの結果について紹介しながら、群集構造の変化との関係を含めて議論する。


日本生態学会