| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) D03-03  (Oral presentation)

親ラメットが経験した土壌資源の垂直分布は、子ラメットの根の空間分布にも影響するか
Does the vertical distribution of soil resources experienced by the parent ramet affect the spatial root distributions of offspring ramets?

*大村拡平, 立木佑弥, 鈴木準一郎(東京都立大学)
*Kohei OMURA, Yuuya TACHIKI, Junichirou SUZUKI(Tokyo Metropolitan University)

移動能力のない植物は、資源分布に応答して可望的に成長する。自立して生育できる植物体(ラメット)が、ストロンで複数連結するクローナル植物は、ラメット間の転流により不均質な資源分布下で効率的に成長する。しかし、個々のラメットの土壌に対する可塑的な反応はよく知られていない。本研究では、カキドオシ(Glechoma hederacea)のラメットが垂直方向に不均質な土壌栄養塩分布下での根の分配様式の解明を目的とし、上下2層で栄養塩濃度の異なる3種の土壌条件を用いた実験1と実験2を行った。実験1では、8個のラメットを有する1本のストロンを用い、栄養塩分布が垂直方向に同様に不均質な条件で5番目までのラメットを生育し、6番目以降のラメットを均質な条件で生育し、各ラメットの成長を解析した。実験2では、分枝させた2本のストロンを用いて5つのラメットを同じ土壌条件で栽培し、その後一方のストロンでは同じ土壌条件で、他方ではそれまでの土壌の上下層を反転させた土壌条件で栽培し、各ラメットの成長を解析した。
ラメットの土壌への定着から一定時間が経過すると、土壌栄養塩の多い層で根が発達し、その発達はラメットごとに可塑的だった。また、上層に栄養塩が多い条件で、フラグメント全体の重量、子ラメットの根の重量が最も大きかった。一方で、定着直後には、子ラメットの地上部の成長は、親ラメットからの転流に大きく依存した。同時期の子ラメットの根は、親ラメットではなく自らの土壌栄養塩分布に過疎的に応答し、特に親ラメットよりも栄養塩量が多いそうで顕著であることが示唆された。以上より、カキドオシでは、土壌へ定着直後の子ラメットの地上部の成長は、親ラメットから転流した資源に依存し、根の成長量は自己と親ラメット双方の土壌環境の影響を受けた。しかし、成長につれて、生育場所の土壌資源量に応答し可塑的に根量が変化したと考えられる。


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