| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) D03-08  (Oral presentation)

林冠画像と毎木調査、年輪から探るブナ林のギャップ動態
Gap dynamics of a beech forest using aerial image of forest crown, forest census data, and tree ring

*坂詰七美(山形大学), 沈昱東(秋田県立大学), 蒔田明史(秋田県立大学), 富松裕(山形大学)
*Nanami SAKAZUME(Yamagata Univ.), Yudong SHEN(Akita Prefectural Univ.), Akifumi MAKITA(Akita Prefectural Univ.), Hiroshi TOMIMATSU(Yamagata Univ.)

 日本のブナ林は、林床にササ類を伴うことが多く、密生するササは樹木の実生更新を妨げると考えられている。秋田県十和田湖南岸のブナ老齢林では、林床に密生するチシマザサ個体群の一部が、1995年に広い範囲で一斉開花・枯死した。その後、約2 haの調査区が設けられ、1996年から毎木調査が行われている。これまでの分析から、林内には1996年以前に形成された古いギャップが多く存在し、ギャップが占める面積が現在では25 % にも及ぶことが明らかとなった。本研究では、このブナ林のギャップ動態の分析を行った。まず、2017-2023年にドローンで撮影した林冠画像を用いて、6年間にわたるギャップの形成・閉鎖過程を分析したところ、閉鎖速度(1.06 %/年)が形成速度(0.86 %/年)を上回っていた。ギャップの閉鎖は、その95 % がブナ樹冠の横方向の成長によるもので、幼木が林冠層に達する縦方向の成長はほとんど寄与していなかった。次に、古い大きなギャップに注目し、周辺の幹の年輪に記録された成長パターンから、ギャップの形成年代を評価した。その結果、古いギャップが80-140年前から形成されていたこと、複数の林冠木が断続的に枯死することでギャップが拡大したことが示唆された。また、1995年にササが枯死した場所では比較的多くの稚樹や幼木が見られ、胸高断面積合計も顕著に増加していたが、更新木の分布がギャップの周縁部に偏っていたことや一斉枯死の間隔が長い(おそらく100年以上)ことから、大きなギャップが完全に閉鎖するまでには相当長い時間を要すると予想された。以上の結果から、このブナ林の動態は大きなギャップの形成と、ギャップが閉鎖するまでの長い時間によって特徴づけられると考えられた。


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