| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) E01-02 (Oral presentation)
林道開発は野生動物の生息地を破壊する側面もあるが、一般的な道路よりも野生動物への負の影響は弱いことから、林道は一部の哺乳類に積極的に利用されている。しかし、林道は頻繁に管理される林道から管理されていない廃道まで様々な状態で存在し、管理の状況に応じて環境も様々であり、一様には利用されていないはずである。本研究では、1)管理強度の違いが哺乳類の林道利用に与える影響を明らかにすること、2)食肉目が林道を利用する理由を採餌戦略の観点から明らかにすることを目的とした。
管理強度の違いが哺乳類の林道利用に与える影響を明らかにするために、カメラトラップによる各種の撮影頻度と野外調査によって取得した環境要因および人間活動との関係を解析した。その結果、林道の環境は管理強度によって異なり、交通頻度と植生の繁茂状態に応じて各種は利用する林道を選択していた。人間活動によるリスクと林道から得られる利益のトレードオフによって哺乳類は利用する林道を選択することが示唆された。
食肉目が林道を利用する理由を採餌戦略の観点から明らかにするために、アカギツネとタヌキによる林道の利用頻度と行動を把握するためのカメラトラップ調査、餌資源量調査(節足動物、小型哺乳類、果実)、下層の視認性(餌資源の発見しやすさ)を調査した。解析の結果、林道は林内と比較して餌資源が多いわけではないが、下層の視認性が高い環境であった。また、行動解析よりアカギツネは林道を移動経路として利用する一方で、タヌキは林道を採餌場所として利用することが示唆された。
これらの一連の研究から、哺乳類(特に中型食肉目)は管理強度による環境と人間活動の変化に応じて、利用する林道を選択することが明らかとなった。林道の利用用途は種の採餌戦略によって異なり、各種がリスクと利益のトレードオフ踏まえて林道を選択していることが示唆された。