| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) E01-03  (Oral presentation)

市街地の鳥類は種によって異なるスケールで景観を選好する
Birds prefer landscape elements in different scales: a case study in Sakai River, Sagamihara

*増田侑太朗, 大崎晴菜, 立木佑弥(東京都立大学)
*Yutaro MASUDA, Haruna OHSAKI, Yuuya TACHIKI(Tokyo Metropolitan University)

 景観要素と鳥類の出現の関連についてはこれまで広く議論されてきた。近年では、より小さいスケールにおいても、景観要素の違いによって出現する鳥類種が異なることが指摘されている。例えば、樹林面積や農地面積等の土地利用が地域の鳥類相を決定づける要因のひとつであることが知られている。また、河川の環境が水鳥の出現や利用に効果をもたらすことも知られている。一方で、局所的な景観要素がどのようなスケールで鳥類に影響をもたらすのかについては十分に検討されていない。
 そこで本研究では、市街地の河川周囲の景観要素が鳥類の出現にもたらす効果とそのスケールを明らかにすることを目的として野外の鳥類相の調査を実施した。調査は神奈川県相模原市の境川で実施し、調査区域内に出現した鳥類の種と個体数を記録した。また、景観要素を取得するために、航空写真を利用して区域の周囲 50、100、200、400 mのスケール内における樹林、農地、住宅地の面積割合を算出した。解析の結果、鳥類種によって出現個体数に影響する景観要素やそのスケールが異なることが明らかになった。ヒヨドリでは周囲 200 mの樹林面積割合、スズメでは周囲 200 mの住宅地面積割合による効果が大きいことが示された。ヒヨドリは高木、スズメは人工物を営巣や休息、移動に利用することが知られている。よって、これらの結果には各鳥類の種生態が反映されていると考えられる。また、影響のある景観スケールについては、体サイズや行動範囲の大小のみによって決定されない可能性が示唆された。


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