| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) E01-04 (Oral presentation)
都市域に残存する森林は、生物多様性を保全する上で重要な生態系であり、かつ様々な恩恵、すなわち生態系サービスを提供している。しかしその基盤となる木本植物群集については、都市化への応答に関する知見が乏しい。そこで本研究では、都市域の木本植物群集がもつ多様性の特徴を種および機能レベルで把握し、都市化とそれに付随する人為的要因との関係を明らかにすることを目的とした。
つくば市とその周辺部において、都市域の孤立林(以下、都市林)24地点と、筑波山麓の連続性の高い森林(以下、連続林)24地点に調査区を設置し、毎木調査を実施した。記録した木本植物は胸高直径を基に高木層、低木層、実生層に区分し、各層で種数とシンプソンの多様度指数(1−D)を求めた。さらに8つの形質の違いより、在・不在データに基づいた機能的多様性(Rao’s QPA)と優占度を考慮した機能的多様性(Rao’s QAB)を算出した。その後、一般化線形モデルを用いて多様度指数と、森林の孤立度および植生管理の有無との関係を解析した。
その結果、実生層における調査区あたりの種数と1−Dは、連続林よりも都市林の方が有意に高いことが明らかにされた。しかし、低木層と実生層のRao’s QPAは都市林の方が低かった。一方、優占度を考慮したRao’s QABでは差がみられなかったことから、優占的な木本植物とは異なる形質をもつ種が、連続林の機能的多様性を高めているが、それらの種が都市域では欠落 していることが示唆された。8つの形質のうち、種子散布型の多様性は、都市林で顕著に減少していた。これは、孤立した森林では鳥散布の種に偏ることや、植生管理によってその他の散布形態の種が減少しているためと推測された。さらに、都市域では園芸種や外来種が増加し、種と機能の両レベルで均質化がみられた。以上のことから、都市域において、種および機能の双方で豊かな森林を残すためには、森林間の連結性の確保や非在来種の定着を抑制する森林管理が必要である。