| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) E01-06  (Oral presentation)

ソーシャルセンシングによる桜開花フェノロジー【B】
Social Sensing for Cherry Blossom Phenology【B】

*堤田成政(埼玉大学)
*Narumasa TSUTSUMIDA(Saitama Univ.)

桜の開花フェノロジーは、気候変動の重要な指標である。しかしながら、通常の定点観測では観測範囲が限定的であるため、局所レベルでの桜の開花イベントの記録作成は難しい。この問題に対処するため、市民参加型の観察プログラムやリモートセンシングによる観測が実施されている。しかしながら、これらのアプローチにおいても空間的・時間的に不十分な観測体制である。本研究では、地理的・時間的に分散した街路レベルの写真データと深層学習モデルを組み合わせた桜の開花フェノロジー観察のための観測システムを提案する。ソーシャルセンシングデータリポジトリであるMapillaryから得られた街路レベルの撮影写真から、ソメイヨシノの開花を検出するためのYOLOv4モデルを開発した。検出モデルは、全体精度、再現率、適合率がそれぞれ86.7%、70.3%、90.1%となった。Mapillaryの写真に付加されている観察位置と観察日時を用いて、10 m × 10 mの空間グリッドによりソメイヨシノの開花確率を一日ごとにマッピングした。十分な観測があると、開花日、満開日、および落花日を時系列分析を用いて推定することが可能となる。2022年に埼玉大学で行われたケーススタディにてソメイヨシノの位置と開花タイミングを自動的にマッピングすることに成功した。我々のアプローチは位置情報付きの街路レベルの写真にのみ依存しており、桜の種類などの事前知識を有しない観測者でも撮影できるため、従来の定点観測や市民参加型観測プログラムよりも容易に実現する可能性がある。このアプローチは他の研究地域にも適用可能であり、さらには他種の開花時期を観察し記録することも可能となる。


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