| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) E01-10  (Oral presentation)

Using Bioacoustic Monitoring for Spatial Tracking of Silver Croaker (Pennahia argentata) during courtship

*Keisuke OHTA(Tohoku Univ.), Tomonari AKAMATSU(FRA), Michio KONDOH(Tohoku Univ.)

動物はしばしば音を使って広範囲に情報を伝える。多くの魚種で繁殖時に音を出すことが知られておりシログチ(Pennahia argentata)もその一種である。シログチは大規模な群れを形成し、大合唱をしながら繁殖を行う。しかし集団サイズが大きいために調査が困難で、群れ全体が時空間的にどのように変動しながら繁殖をおこなっているのかは明らかになっていない。本研究では海中に、約1km四方を囲むように5本のマイクロフォンを設置した。そこから得られた音量のデータと状態空間モデルを用いて、どこで、何個体が、どのような密度で繁殖を行っていたのかを推定した。状態空間モデルでは、各マイクロフォンで計測される音量の差に基づき10分毎の集団の位置・集団内の音源の数・範囲をParticle Filterを用いて最適化した。その結果、夕方ごろに形成された集団が移動し夜半ごろに収束する様子を捉えることができた。集団の移動経路にはいくつかのパターンがあり、繁殖の進行に伴って集団の大きさや個体数が大きくなっていく傾向があった。本研究で示したように、音響観測と状態空間モデルを組み合わせることで集団の時空間変動を高い解像度で推定することができる。このような推定は、魚のみならず鳥の渡りや蝗害の位置や移動経路の特定、あるいは集団繁殖動態の研究など多くの分野で利用可能であろう。また将来的に、生物集団の移動・繁殖に関する高解像度の情報は、適切な水産資源管理や効率的な生物多様性保全を達成するための助力となりえるだろう。


日本生態学会