| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) E02-05  (Oral presentation)

自然生態系におけるCritical Transirionを伴うレジームシフト の実証
Demonstrating Regime Shifts with Critical Transirion in Natural Ecosystems

*深澤陸, 近藤倫生(東北大学)
*RIKU FUKASAWA, Michio KONDHO(Tohoku University)

生態学の理論は、環境の変化等による生態系の安定性の喪失に伴って、生態系に不可逆的かつ不連続な変化、いわゆるレジームシフトが起きることを予測している。しかし、従来の野外での実証研究は、特定の系統群の生物量や群集組成の変化を捉えてはいるものの、非定常にある生態系の力学的安定性の評価の難しさから、理論予測の直接的な実証は十分になされていない。その上、相互作用する個々の生物種の動態が、群集全体に及ぶ大規模な変化とどのように関わるのかについても明らかになっていない。そこで、我々は非定常動態の解析を可能にする非線形時系列解析を琵琶湖における植物プランクトン群集の40年間に及ぶ高頻度モニタリングデータに適用し、群集の力学的安定性を推定した。1990年代初頭に起きた群集組成の劇的な変化は、富栄養化などの環境変化による力学的不安定化が引き起こしたレジームシフトであったことを支持する結果が得られた。具体的には、理論から予測されるように、群集組成が大きく変化した1990年台初頭からの約10年間には安定な動態から不安定な動態への遷移が生じていた。さらに撹乱への高い感受性を持つ種は、レジームシフトに際して顕著に生物量を変化させており、レジームシフトにより大きな貢献をしていたことを示唆している。 高度な生物多様性観測に基づく生態系の構造や動態の理解は、変化する地球環境下における自然生態系の応答を理解する上での重要な示唆を与える。


日本生態学会