| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) E02-07 (Oral presentation)
気候に関連して毎年繰り返される生物活動は、生態系の安定性や地球変動に対する生態系の応答にとって重要である。また、適度な季節性は種の時間的ニッチ分割を通じて種多様性を高める可能性がある。本研究では、生態系の指標群集として期待される有剣ハチ群集の種多様性と形質の季節変動を明らかにし、季節性が有剣ハチ群集の種多様性に与える影響を検討した。
調査は九州脊梁山地に位置する九州大学宮崎演習林の落葉広葉樹天然林で行った。4林分を調査地として設定し、4月(展葉前)、5月(展葉後)、7月、9月、11月(落葉後)の5回行った。有剣ハチの採集にはイエローパントラップを使った。個体数、種数、種多様性、5つの形質(栄養段階、デトリタス依存度、体サイズ、出現期間、営巣場所)の季節変動を、Tukey-Kramer法を用いて多重比較した。
種多様性は7月に高く、11月に低くなった。個体数と種数には季節間の差はみられなかった。栄養段階とデトリタス依存度は4月から7月にかけて高くなり、9月、11月と低くなった。気温の年変動に伴って有剣ハチの餌資源利用様式が変化しており、高栄養段階のデトリタス依存種の種多様性が高いことが示された。体サイズに季節間の差はなかった。出現期間は4月のみが低く、春に出現する種はその季節に特化して適応した年1化の種であることが示された。営巣場所は7月に高くなり、地中営巣が低気温からの逃避である可能性が示唆された。九州の落葉広葉樹林における有剣ハチ群集は、季節の変化による食性の変化を通じて種多様性が季節変動することが明らかになった。