| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) E02-08  (Oral presentation)

近年枯死したナラ枯れ木に対する大型土壌動物の応答
Responses of soil macrofauna against Japanese oak wilt  recently occurred

*村上悠士(近畿大・農), 平岩将良(近畿大・農), 滝久智(森林総合研究所), 北島博(森林総合研究所), 早坂大亮(近畿大・農)
*Yuto MURAKAMI(Fac. Agric., Kindai Univ.), Masayoshi K. HIRAIWA(Fac. Agric., Kindai Univ.), Hisatomo TAKI(FFPRI), Hiroshi KITAJIMA(FFPRI), Daisuke HAYASAKA(Fac. Agric., Kindai Univ.)

森林生態系に及ぼす脅威として、世界中で樹木病害が注目されている。日本では主にナラ類の集団枯損被害(ナラ枯れ)が各地で発生しており、枯死の進行に伴う樹冠の疎開やリター供給を介した生物群集への影響が懸念されている。被害木周辺の局所的環境でもアリ類の種多様度の低下が確認されている。個々の樹木は直近の土壌環境を変化させることから、ナラ枯れ被害木による環境の変化が直近に生息する土壌動物へ影響を及ぼす可能性は否定できない。しかし、森林生態系の安定性の維持に重要な土壌動物の評価は限定的である。土壌動物の相互作用は複雑であるため、攪乱によるこれら動物の動態の予測には網羅的な評価が不可欠である。なかでも、土壌構造の改変や地上部・地下部の生物群集と捕食-被食関係を持つ大型土壌動物(体長2 mm以上)による評価が鍵を握るだろう。本研究では、ナラ枯れ発生直後の被害状況が異なる樹木(穿入生存木、当年枯死木、枯死2年目木)を対象に,被害木の変化(樹冠開空度と細根量)や土壌環境要因と大型土壌動物の個体数との関連性を解析し、個体数および種多様度の比較から、森林の局所的環境への影響を評価した。その結果、大型土壌動物は10目が確認され、どの被害木でもミミズが一番多かった.個体数は、当年枯死木が穿入生存木と比べ有意に多かった。環境要因については、当年枯死木の含水率が生存木より高い傾向にあり、解析の結果、含水率が高いと大型土壌動物の個体数が多くなることが示唆された.多様度指数については被害木間で差がなかった。また,枯死2年目木で細根量が有意に少なかった.被害木は時間経過によって根の腐朽が進行することから、細根にも波及し根食者へ影響を及ぼす可能性がある。被害木の変化やナラ枯れに起因した土壌環境の変化による大型土壌動物への影響は顕著ではなかったが、本成果はナラ枯れがもたらす土壌動物の動態の解明の一助となるだろう。


日本生態学会