| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) E02-09  (Oral presentation)

海浜性甲虫群集の形成機構 ~五島列島における海浜間の類似度の決定要因~
The formation mechanisms of sandy shore beetle communities ~Determinant factor of similarity between sandy shores in Goto islands~

*上野弘人(九大院・地社), 北川耕咲(名大院・理), 有本晃一(京大院・地球環境学堂), 東悠斗(いであ(株)), 野崎翼(九大院・生資環), 荒谷邦雄(九大院・比文), 松林圭(酪農学園大・環境)
*Hiroto UENO(Kyushu Univ. ISGS), Kosaku KITAGAWA(Nagoya Univ. Science), Koichi ARIMOTO(Kyoto Univ. GSGES), Yuto HIGASHI(IDEA Consultants, Inc.), Tsubasa NOZAKI(Kyushu Univ. GSBBS), Kunio ARAYA(Kyushu Univ. SCS), Kei W. MATSUBAYASHI(Rakunogakuen Univ. DES)

日本列島のような島嶼において, 分断や陸生生物の海流分散が群集形成に与える影響を明らかにすることは生物多様性の創出や維持機構の解明に資する重要なテーマである. 長崎県五島列島は, 地史的な差異を有する複数の島々から構成され, 複雑かつ多様な生物相が成立する地域であり, 島嶼において陸生生物の群集形成要因を検討する上で良いモデルとなる. 甲虫では, 既往の研究で内陸性のオサムシ科の種で島ごとの遺伝的分化がみられるなど, 隣接しあった島間においても, 分断による影響から島ごとに多様な生物相が形成されている可能性がある. 様々な環境の中でも海浜は海岸線に沿って不連続, パッチ状に分布し, 五島列島周辺の島々では, 上記のオサムシ科同様, 島, さらには浜ごとに多様な生物相が成立している可能性がある. その一方で, 我々のこれまでの研究で海流分散が示唆された甲虫種も複数生息しており, 内陸性の甲虫とは異なり島間, 浜間で類似した生物相を形成する可能性もある. 上記の背景に基づき, 本研究では, 気候条件の差が少ない地理的スケールにあり, 多数の海浜性甲虫が生息する長崎県の五島周辺の4島(福江島、中通島、江島、宇久島)の7つの砂浜でピットフォールトラップおよびコドラート法により甲虫相を調査し, そのデータを用いて各浜間のβ多様度をBray-Curtis指数で算出した. さらに, 一般化線形モデル(GLM)を用いて, 植生のβ多様, 浜間の面積の差, ERDDAPの公開海流データに基づく浜間の移動時間および到達確率が甲虫のβ多様性に及ぼす影響を解析した. その結果, 海浜性甲虫のβ多様性は0.63~0.98と海浜間で種構成は異なり, 植生のβ多様性が海浜性甲虫のβ多様性を有意に説明することが示された. 砂浜という環境の特性を踏まえると海流の影響も考えられたが, 五島列島周辺の地理的構造では海流が移動分散に与える影響は小さく, ハビタットとなる植生の影響を強く受けたと考えられる.


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