| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) E03-02  (Oral presentation)

伊豆諸島におけるカラスバトの島間移動パターン【B】
Mmovement pattern of the Japanese Wood Pigeon in Izu Islands【B】

*安藤温子(国立環境研究所), 市石博(国分寺高校)
*Haruko ANDO(NIES), Hiroshi ICHIISHI(Kokubunji HS)

島嶼に生息する鳥類に関して、島ごとの種分化に関する研究は数多く行われてきたが、諸島を形成する島間を日常的あるいは季節的に移動する鳥類の生態に関する研究は少ない。カラスバトは日本と韓国周辺の島嶼にのみ生息し、島々を移動することが知られているが、その要因やパターンについてはほとんど分かっていない。本研究では、伊豆諸島においてカラスバトの目視観察とGPS追跡を行うことで、本種の島間移動パターンを明らかにすることを試みた。
2017年から2020年の間に八丈島と八丈小島で実施した観察調査では、互いに4km離れた両島の間を多数のカラスバトが日常的に移動することが確認された。移動個体数は繁殖期である5月から8月にかけて1日数千羽に達する一方で、冬には全く観察されず、主要な営巣地である八丈小島での繁殖活動に関係していることが示唆された。
2022年と2023年に大島 (n=5) 、八丈小島 (n=3)、青ヶ島 (n=6)で捕獲または保護されたカラスバトにGPS発信機を装着して追跡したところ、このうち8羽が異なる島に移動した。八丈小島の個体は全て八丈島に渡ったが、それ以外の島への移動は確認されなかった。一方、大島の2羽がそれぞれ三宅島と新島へ、青ヶ島の3羽がそれぞれ八丈島、三宅島、大島へ移動した。八丈島-八丈小島間以外の島間移動は、全て夜間に行われていた。
カラスバトは、近接する島間を日常的に移動する一方で、約20kmから170kmに及ぶ長距離移動も行うことが明らかになった。長距離移動の季節性並びにその駆動要因を明らかにするためには、GPS追跡と環境データのさらなる蓄積が必要である。長距離移動においてのみ確認された夜間飛行についても、今後そのメカニズムが解明されることが期待される。


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