| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) E03-03 (Oral presentation)
鳥類が渡る時間帯は種によって異なり、主に昼間に渡る種と夜間に渡る種とに分けられる。しかしながら、これまで鳥類の渡る時間帯は科・目といった分類階級で評価されており、種レベルではほとんど調べられてこなかった上、渡る時間帯に関する系統的制約や形態・生態的形質との関係性もほとんど明らかにされていなかった。本研究では、多様な鳥類の渡る時間帯の分布を種レベルで明らかにし、その系統的制約や形態・生態的形質との関係について明らかにすることを目的とした。この研究では北半球に分布域を持つ渡り鳥を対象とし、条件を満たす種をBirds of the WorldとAVONETの二つの文献から選定した。これらの対象種の渡る時間帯の情報を系統的レビューと野外観測によって収集した。次に、δ統計量を算出して、渡る時間帯の系統的制約の程度を調べた。さらに、系統関係を考慮した線形回帰モデルを構築し、渡る時間帯と各形態・生態的形質の関係を明らかにした。系統的レビューと野外観測によって、990種の渡る時間帯の情報を収集し、昼渡りが432種、夜渡りが558種であった。これに外洋性の海鳥97種を加えた1087種のデータを解析した結果、渡る時間帯は、系統的制約を強く受けていたが形態・生態的形質とも関連していた。具体的には、昼渡り種では夜渡り種よりも、HWIが短く、体サイズが大きかった。鳥類では、体サイズの大型化に伴って、渡り飛行時のエネルギー消費増加を抑えるため、昼間の熱上昇気流を利用したソアリング飛行を用いるようになると考えられる。このような理由から、体サイズの大型化が昼渡りの傾向を強めた可能性が考えられる。本研究では、翼の形状に関わる形態的形質(HWI)と渡る時間帯の間に関係性があることが明らかになった。先行研究では、鳥類の翼の形状が行動・生態的な特徴よりも系統的制約を受けていることが示唆されており、渡る時間帯の形質も、翼の形状と同様な制約を受けながら変化してきた可能性が考えられる。