| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) E03-04 (Oral presentation)
森林倒壊後の倒木搬出は採餌や繁殖を倒木に依存する昆虫や鳥類を減少させることや、実生や稚樹のシカ食害を増加させることが明らかにされている。しかし、倒木搬出が中型哺乳類に与える影響は解明されていない。特に北海道では外来種アライグマと在来種キタキツネ、エゾタヌキの種間競争が懸念されており、倒木搬出がそれらに及ぼす作用を明らかにすることは在来種の保全上重要といえる。そこで北海道胆振東部地震で表層崩壊した森林において、崩壊地谷底部を対象に、レガシー(ログジャム)残置区と倒木搬出区において、外来種を含む中型哺乳類の利用頻度を比較し、生息地選択の局所要因を明らかにすることを研究目的とした。
自動撮影カメラをレガシー残置区に8個、倒木搬出区に8個設置した。撮影頭数によりキタキツネ、エゾタヌキ、アライグマの利用頻度を求めた。局所要因としてネズミ類の撮影頭数、カメラ周辺半径5m以内における地表徘徊性昆虫の重量と科数、土地被覆率、そしてログジャムの高さ・空隙率・面積の測定を通じてログジャムの体積の指標を算出した。
撮影頭数から、キタキツネは倒木搬出区、エゾタヌキはレガシー残置区、アライグマは両方を利用する傾向や、活動時間帯がある程度異なることが明らかになったため、競争はある程度回避されていると考えられる。撮影頭数に関するモデル選択の結果、キタキツネとアライグマは地表徘徊性昆虫が豊富な場所であるログジャムを忌避することが明らかになった。そのため、ログジャムは地表徘徊性昆虫の捕食を阻害していると考えられる。また、エゾタヌキはネズミ類が多い環境を選好しており、捕食のためネズミ類に誘引されている可能性がある。さらに、アライグマは裸地を選好することが明らかになった。外来種の抑制と在来種の保全を目的とした森林管理では、 レガシー残置区を残すこと、倒木搬出後も残存植生やログジャムを残し、裸地を減らすことが重要である。