| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) E03-06  (Oral presentation)

コイ科の追星を食べる: マラウイシクリッドDocimodus evelynaeで見つかった新奇な習性
Pearl organ feeding: mysterious habit found in a Lake Malawi cichlid Docimodus evelynae

*竹内勇一(北海道大学), 畑啓生(愛媛大学), 佐々木瑞希(帯広畜産大学), 丸山敦(龍谷大学)
*Yuichi TAKEUCHI(Hokkaido Univ.), Hiroki HATA(Ehime Univ.), Mizuki SASAKI(Obihiro Univ. Agric. Vet. Med.), Atsushi MARUYAMA(Ryukoku Univ.)

アフリカの古代湖に生息するシクリッド類は、爆発的な種分化によって様々な生態を獲得してきた。彼らの食性についても驚くほど多様化している。私たちはマラウイ湖において他の魚のウロコを食べる「鱗食魚」として知られるシクリッドDocimodus evelynae(以下、エベリナ)の幼魚(体長50~109mm)の食性を調べた。エベリナの胃内容物は、大きさ1mmほどの未知の「白い固形物」で主に構成されていた。白い固形物の起源を明らかにするため、候補となる動物器官や物体とともに分析を行った。XRF分析から、その物体は硫黄に富み、ケイ素とカルシウムが少ないことから、表皮組織であることが示唆された。組織学的および形態学的分析により、多細胞性でカップ状の形状をしていることが明らかとなった。これらの特徴は、コイ科魚類Labeo cylindricusの追星と一致した。Labeoは東アフリカの淡水域に広く分布し、エベリナとも同所的に生息する唯一の大型コイ科魚類である。さらに白い固形物からDNAを抽出し、COI領域の塩基配列を調べた。得られた配列はL. cylindricusのものと最も一致していた。魚類の主食として報告されたことのないコイ科魚類の追星は、カロリー計算上、魚食やエビ食と同等の栄養素を提供する可能性があることも分かった。エベリナがLabeoの頭部にある追星をどのように奪取するのかを理解することは、マラウイ湖における種間相互作用と食物網構造の理解を深めるためには重要であろう。


日本生態学会