| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) E03-08  (Oral presentation)

東北沖イラコアナゴに寄生するホラアナゴノエの性転換について
Sexual Transformation of the Elthusa sacciger on Synaphobranchus kaupii off the Coast of Tohoku, Japan

*森本紗世(北海道大学), 成松庸二(水研研究・教育機構), 鈴木勇人(水研研究・教育機構), 森川英祐(水研研究・教育機構), 山村織生(北海道大学)
*Sayo MORIMOTO(Hokkaido Univ.), Youji NARIMATSU(FRA), Yuto SUZUKI(FRA), Eisuke MORIKAWA(FRA), Orio YAMAMURA(Hokkaido Univ.)

ウオノエ科等脚類の多くは雄性先熟型の性転換を行い、一般的に2個体目の寄生を契機として性転換を行うと考えられている。ウオノエ類のうち、特に鰓腔寄生種では雌雄のペアで寄生するが、この場合1個体のみで寄生しているウオノエは性転換せず、雄または幼生のみとなるはずである。ホラアナゴノエElthusa saccigerはイラコアナゴおよびホラアナゴに寄生する鰓腔寄生種であり、本科の中で最も祖先的であるとされるが、その生態学的な知見は乏しい。本研究では、東北沖(本州北部太平洋沖)イラコアナゴに寄生するホラアナゴノエの分布状況を調べるとともに、その繁殖戦略について検討した。
2020–2021年に東北沖の延べ200地点で漁獲した1455尾のイラコアナゴから275個体のホラアナゴノエを採集し、宿主全長、虫体の性別、体長、各宿主への寄生数に加え雌については卵の有無を記録した。
結果、寄生率は調査海域全域で12.1%(0–64%)であった。1尾当たりの寄生数が1個体、2個体の宿主はそれぞれ60尾と106尾で、後者の92%は雌雄一対で寄生していた。雌のホラアナゴノエの体長と宿主全長には強い相関が認められ、本種の体サイズは寄生部位の空間容積に制限されていると考えられた。また寄生個体における雌の比率は、1個体寄生のうち53%、抱卵率は10%だった。一方、2個体寄生の雌の抱卵率は65%にのぼった。これは1個体寄生の雌が必ずしも雄の脱落に因らないことを示唆する。また、1個体寄生の雌雄は虫体長30 mm付近で分かれていた。以上より、本種は一般的なウオノエ類の性転換仮説とは異なり、2個体目が寄生したあとにのみ性転換が起こるとは考えにくく、虫体サイズの増加がその契機となっているかもしれない。ウオノエ類は雌の体長が大きいほど抱卵数が増えることが知られている。ホラアナゴノエは単独でも一定以上のサイズで雌に性転換することで効率的に大きくなり抱卵し、結果的に繁殖効率を上げている可能性があると考えられた。


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