| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) E03-09  (Oral presentation)

ダンゴイカ類における成熟サイズの季節変化と精子競争の関係
Relationship between seasonal changes in mature body size and sperm competition in the Japanese bobtail squid

*戸田達也, 猪股雅史, 河村知彦, 岩田容子(東京大学)
*Tatsuya TODA, Masashi INOMATA, Tomohiko KAWAMURA, Yoko IWATA(The University Tokyo)

頭足類は餌条件や水温条件により成熟速度や寿命、繁殖力に季節差が生じることが明らかとなっている。ダンゴイカ類は海外の種で寿命が5-8か月と考えられていることから1年に複数世代存在する可能性があり、異なる季節の世代間で繁殖形質が異なる可能性がある。しかし、ダンゴイカ類の野外での繁殖形質に関する研究はこれまでほとんどなされていない。そこで、本研究では野外調査によりダンゴイカ類の基礎的な繁殖生態を解明することを目的とした。
広島県大崎下島で2か月に1回、周年にわたってダンゴイカ類を採集した。採集した個体の形態計測・解剖を行った結果、ダンゴイカの成熟個体は年中観察された。成熟サイズは季節により変化し、2月・4月は大型、その後次第に小型化し、10月・12月は小型であった。この成熟サイズ変化の原因として、温度サイズ則が考えられ、水温が低下し始める10月から12月に成長期を過ごした個体は成熟までの期間が長くなり、12月から2月に大型で成熟したと考えられた。また、10月・12月は成熟サイズが小型であるにもかかわらず、成熟雄が体内に持っていた精莢の本数が多かった。1個体の雄がもつ精莢サイズには大きなばらつきがみられた。雌の貯精器官に付着していた精子塊にも様々な大きさが見られ、貯精器官の奥には大型の精子塊、手前には小型の精子塊と、大きさにより付着部位が異なった。以上より、ダンゴイカの雄は精莢数や精莢サイズを変化させる精子配分戦略をとっている可能性が考えられ、10月・12月は比較的短期間で生産可能な小型の精莢を多く生産することで精莢の枯渇を防ぎ、2月・4月は1本あたりの精子量の多い大型の精莢を少数生産すると考えられた。また、雄1個体が持つ精莢サイズにばらつきがみられたことから、交接回数の少ない雄が成熟初期に生産した小型の精莢と成熟後期に生産した大型の精莢の両方を貯蔵している可能性が考えられた。


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