| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) F01-01 (Oral presentation)
2023年に改正された外来生物法においては、ヒアリSolenopsis invictaやアカカミアリS. geminataを代表種とするヒアリ類が、国内への拡散を防ぐため、移動の制限・禁止といった緊急処置を国が命じることが可能な「要緊急対処特定外来生物」という新枠組へと一括指定された。2017年より累積してのヒアリの侵入事例数は2023年末時点で18都道府県111事例に上り、東京港や大阪港など、大都市に隣接する国際港湾における大型野生巣の営巣も継続的に報告されている。さらに2023年には、中南米原産の特定外来生物コカミアリWasmannia auropunctataの国内侵入が岡山県水島港において初確認され、続いて兵庫県神戸港からも報告された。中国南部原産のツマアカスズメバチVespa velutinaも2022年に福岡県において野生巣が発見され、本土への侵入リスクが高まっており、我が国への外来社会性昆虫の侵入・定着はまさに瀬戸際の状況と言える。国立環境研究所では多様な外来昆虫に対する緊急防除を強化するため、早期発見・防除技術の高度化を図り、各地方自治体と連携して防除体制の整備を進めている。ヒアリ類に関しては、コンテナ内ワンプッシュ型エアゾール剤による防除(消毒)手法を開発し、改正外来生物法に「消毒基準」として実装した。さらに外来アリ類の早期発見を目的に、簡便な遺伝子同定手法であるLAMPキットの高度化および、台湾において活用されるヒアリ探知犬の国内における検証を実施した。体長1mm強の微小なアリ種であるコカミアリを対象とした急性毒性試験法を開発し、薬剤定量評価に基づく緊急化学的防除指導を実施した。ツマアカスズメバチについては、長崎県対馬の化学的防除実施地域において、エンドポイントである新女王数の減少を確認し、薬効評価を実施した。本講演はこれら外来社会性昆虫の日本への侵入状況および新技術開発の最前線について紹介する。