| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) F01-06  (Oral presentation)

ため池におけるコイの駆除が水生昆虫群集に与える影響
Effects of the eradication of invasive common carp on aquatic insect communities in irrigational ponds

*渡邉黎也(兵庫県立大学大学院), 久保星(㈱ウエスコ), 福岡太一(石川県金沢市), 高橋真司(東北大学), 小林一清(兵庫県), 大庭伸也(長崎大学)
*Reiya WATANABE(University of Hyogo), Sho KUBO(Wesco Inc.), Taichi FUKUOKA(Kanazawa City, Ishikawa Pref.), Shinji TAKAHASHI(Tohoku University), Kazukiyo KOBAYASHI(Hyogo Pref.), Shin-ya OHBA(Nagasaki University)

水田やため池に生息する水生昆虫類(トンボ目・カメムシ目・コウチュウ目)は、薬剤使用や圃場整備、耕作放棄地の増加などの要因により減少傾向にある。残存する生息地において個体数の減少に拍車をかけているのが、コイ等の外来生物による捕食圧である。ただし、コイの侵入が水生昆虫類に及ぼす影響を定量的に評価した研究はなく、影響を受けやすい種の生態的特徴は未解明である。本研究では、ため池からコイを駆除し、水生昆虫類の回復過程を記録し、さらに近隣の未侵入池と種組成を比較することでその影響を定量評価することを目的とした。
調査地は兵庫県西部のため池4か所である。ため池1か所では2000年以前よりコイが飼育されていたが、2022年11月に干し上げて駆除した。比較対象として、近隣のコイ未侵入池3か所も調査地とした。侵入池には水生植物は皆無であったが、未侵入池には浮葉・抽水植物が生育していた。各調査地において、2022年11月(駆除前)および2023年4~12月の期間、水生昆虫群集を毎月調査した。
侵入池では2022年11月には6種のみであったが、2023年12月までには合計36種まで出現種数が増加した。また、2023年6月にはタガメの卵塊が2個確認され、クロゲンゴロウやミズカマキリの幼虫も確認されるようになった。NMDSの結果、水生昆虫類の種組成は2022年11月時点では未侵入池3か所と大きく異なっていたが、2023年7月以降は未侵入池2箇所と類似した組成を示すようになった。侵入池と未侵入池において習性関連形質別・月別に個体数を地点間比較した結果、2022年11月時点では水生植物を利用する種や泥に潜る種は侵入池に比べ、未侵入池の方が多かったが、その差は経時的に小さくなった。一方、水面を利用する種や水中を漂う種は調査期間を通して、侵入池と未侵入池で個体数に差がない、もしくは侵入池の方が多かった。したがって、特に水生植物を利用する種や水底に潜る種がコイの影響を受けやすいことが示唆された。


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