| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) F01-07 (Oral presentation)
世界各地で外来鳥類種が定着し,在来生態系や社会経済に影響を及ぼしているが,研究例は十分ではない.本研究では,四国西部の森林に新たに定着した外来鳥類であるサンジャク(Urocissa erythrorhyncha)を対象に,分布や在来種への影響を把握するための効率的な調査・解析方法を確立した.具体的には,プレイバック法を用いてサンジャクの発見率を上げることを試みつつ,占有モデルを用いた解析により,調査時の個体の見落としとこれに対する調査条件の影響を考慮しながら,サンジャクの占有率を規定する環境要因を明らかにした.このモデルを用いて,四国全域における潜在的な生息適地を地図化した.さらに,サンジャクの調査と同時に取得した在来種の発見/非発見データも併せて解析する多種占有モデルを用いて,サンジャクと在来種の両方の占有率・発見率とこれらに対する環境要因・調査条件の影響を推定しながら,サンジャクの存在が在来種各種(キビタキ,ヤマガラ,シジュウカラ,ウグイス)の占有率に及ぼす影響を評価した.この結果,サンジャクの発見率は特定の鳴き声の再生により向上し,5月中旬から6月下旬の早朝に高いことが分かった.サンジャクの占有率は,森林率が中程度(76%でピーク)で標高が低い場所で高いことが示された.サンジャクの存在がこれらの在来種4種の占有率を増減させるというパターンは検出されなかった.サンジャクの占有率の空間分布を四国全域で予測した結果,海岸から近い地域内の,農地が拡がる低地と森林が広がる山地の間が潜在的な生息適地であり,現在サンジャクが定着していない東部にも生息適地が豊富に存在することが示唆された.本研究で用いたプレイバック法と発見率を考慮したモデルの併用は,効率的に外来鳥類の分布状況と在来種への影響を把握でき,外来鳥類を適切に管理するための管理戦略の立案につなげることができる.