| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) F01-09 (Oral presentation)
東京の都市部及び近郊において、タヌキを含めた野生食肉目動物は一時地域絶滅したものの、近年それらの地域において、タヌキの再分布が進んでいる。しかし、東京の都市近郊である北多摩地域においては本格的な野生動物の調査は殆ど実施されておらず、生態及び活動時間についても不明な点が多い。本研究の目的は、北多摩地域の都市緑地のタヌキを調査し、得られたデータを都心で行われた先行研究と比較し、都市部のタヌキの活動時間の特徴について考察することである。
本研究では、2022年9月30日から2か月間、武蔵野市に位置する武蔵野中央公園及び小金井公園の2つの都市公園に合計10台のカメラトラップを設置し、撮影されたデータを基にタヌキの活動時間を分析した。その結果、両公園とも日没直後、並びに日の出前に多く撮影され、特に日没直後に最も多く出現した。一方、日中の活動は全く確認されなかった。小金井公園では武蔵野中央公園よりも活動時間のピークが1時間遅かった。このことから北多摩地域の都市公園においては、主にタヌキの活動のピークは日没直後であり、日中は殆ど活動しないものと考えられる。
都心部に位置する赤坂御用地のタヌキの出現時間は、主に日没直後と日の出前がピークであるが、人との距離が近い地点では活動時間が深夜になるという報告がある。北多摩地域の府中市の大学構内で実施された研究では、夜行性だが日中も観察された。以上の事から今回調査した地域のタヌキは、人の活動が多い日中を避け、夕方から日の出の人が疎らになる時間に活動している事が示される。しかし、武蔵野中央公園と小金井公園の個体の活動時間の違いが生じた要因については、解明に至らなかった。今後、調査の継続が必要である。