| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) F02-01  (Oral presentation)

北海道噴火湾におけるカマイルカの出現と分布予測
Appearance and estimate of the distribution of Pacific white-sided dolphin (Lagenorhynchus obliquidens) in Volcano Bay, Hokkaido, Japan

*黒崎菜摘, 笹森琴絵, 北夕紀(東海大学)
*Natsumi KUROSAKI, kotoe SASAMORI, Yuki F. KITA(Tokai Univ.)

北海道室蘭市噴火湾では、夏期にカマイルカ (Lagenorbyncbus obliquidens) が来遊することから、観光業の一環としてホエールウォッチングが実施されている。しかし、近年、本種の来遊時期の変動が報告されており、観光業への影響が危惧されている。したがって、噴火湾における本種の動向調査は重要な課題であるが、調査範囲は室蘭周辺海域に留まっており、湾全体における本種の分布は不明である。そこで本研究では、生物の分布を調査する方法の一つとして近年注目されているMaxentモデルを用い、本種の噴火湾内における分布推定を行うことを目的とした。2020年を除く2013年~2023年にかけての10年間、6月~8月に観察されたカマイルカ667群を在データとし、環境変数には、水温、塩分、Chl.a濃度、水深、傾斜の5つのデータを用いた。各月においてモデルを作成し、AUC値をもとに最適な変数の組み合わせを評価した結果、6月と8月においては3変数 (塩分、Chl.a濃度、水深) を取り込んだモデルが、7月においては5つの変数全てを取り込んだモデルが最適であると評価された。各月のモデルについて、6月は噴火湾湾口部において分布確率が比較的高いと予測された。噴火湾に来遊するカマイルカは津軽海峡を抜けた一群であると考えられており、本結果はその移動経路と重なることから、既報を支持した。7月は湾口部を中心に比較的広範囲に分布していると予測された。このことは、湾口部の特徴的な地形と本種の子育て行動に関連していると考えられた。8月は、室蘭沖で最も高い分布確率が示され、その範囲は登別付近まで広がっていた。本種が8月下旬に消失してからの移動経路については明らかになっていないが、本結果は登別周辺海域から他海域へ移動している可能性を示唆した。


日本生態学会