| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) F02-08 (Oral presentation)
同性内選択の一種であるメスや縄張りをめぐって、オス同士が闘争する例は多くの生物種で確認される。闘争後、勝者と敗者では異なる闘争による効果が見られる。例えば、勝者ではメスとの交尾成功時間が長くなり、敗者ではメスに輸送する精子量が増える。しかし、勝者と敗者で子孫の数(産卵数や孵化数)を比較した研究は少ない。ジャイアントミルワーム(ツヤケシオオゴミムシダマシ、Zophobas atratus)では、互いに大顎を用いて相手の後脚を咬みあうオス間闘争が観察された。さらに敗者オスは、メスと上手く交尾ができないケースがあった。そこでまず対戦相手に体サイズ差がある、または差がないオス同士で闘争させ、その闘争時間を計測した。次に、それらの勝者オス・敗者オスと未闘争オスの交尾成功時間、およびそれらのオスと交尾したメスの産卵数と孵化数を比較した。その結果、体サイズ差がない闘争は長くなり、未闘争オスと比べ、体サイズ差がない闘争の敗者オスだけ産卵数と孵化数が有意に減少した。この減少は、長時間の脚咬み闘争での脚の負傷によるものと考えられ、敗者オスの精子量の増加に対するライバルオスの進化かもしれない。